淘汰進むグロース市場で、プライム級の成長期待株は?
淘汰進むグロース市場で、プライム級の成長期待株は?

投資情報部 鈴木 英之 栗本奈緒実
2025/06/05
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証グロース市場・スタンダード市場の中小型株を中心に、好業績が期待される銘柄や、投資家の皆様が気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
新興株ウィークリー
※YouTubeに遷移します。
淘汰進むグロース市場で、プライム級の成長期待株は?
日経平均株価は再び38,000円から押し戻され、新しい好材料を欠いたまま上値の重い展開が続いています。米政権による関税政策への警戒感から外需株は嫌気され、内需企業が多い東証グロース市場指数は相対的に堅調です。トランプ関税発動前から直近の指数騰落率(3/31~6/3)は、東証プライム市場指数の+4.2%に対し、東証グロース市場指数は+15.0%と良好なパフォーマンスを示しました。
足元の株価推移は堅調ですが、東証グロース市場では喫緊の課題として変革を求められている企業が多数あります。
2022年、東京証券取引所(東証)は市場再編を行いました。記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。その際、市場全体の質の向上や、国際的競争力強化を目指すため、上場維持基準の厳格化が実施されました。
一方、流動性の向上などは、新基準に達しない企業が即座に対応しきれない面もあります。そのため、東証は猶予として3年間の経過措置期間を設けました。25年3月末が直近の決算期末で新基準を満たしていない企業の場合、26年3月期は改善期間となります。この1年を経ても基準を満たすことができなければ、以降は最終猶予として監理・整理銘柄に指定されます(原則6カ月)。そして、それでも改善が見られない場合は、上場廃止となる流れです。
東京株式市場では、3月を決算月とする企業数が最も多いです。よって、25年4月以降は経過措置期間が終了し、改善期間として改革を促されている企業が多数あります。*詳細は、こちらをご確認ください(外部ページに遷移します)。
中でも東証グロース市場は、より一層、「高い成長性が重視される企業群」というキャラ立ちした市場を目指す改革が求められています。本年4月22日にJPXから公開された「グロース市場の上場維持基準の見直し(案)」では、以下の案が示されました。
✓ 上場維持基準を、上場5年経過後から、時価総額100億円以上 へと変更
(現行:上場10年経過から、時価総額40億円以上)
✓ 2030年以降、上場5年経過している上場企業に適用
注意事項として、「(※)時価総額40億円以上100億円未満はスタンダード市場への市場区分変更の対象となるよう手当て」との記載がありました。しかし東証グロース市場では、時価総額100億円以上の銘柄数が199銘柄(33%)なのに対し、40億円~100億円未満が200銘柄(33%)と僅差ながら数が上回っています。さらに、40億円未満は210銘柄(34%)と東証スタンダード市場への区分変更基準も満たせない可能性がある企業が多数です(※Quick Workstation Astra ManagerデータをもとにSBI証券が試算。上場株式数ベース、2025/6/3時点)。
米国と比較すると日本の新興グロース株は、時価総額が比較的小さく、売買高も低調気味です。そのため、機関投資家にとっては投資対象にしにくいといった課題点もあり、改革実現も一筋縄ではいかない可能性もありそうです。日本経済新聞社では5/27(火)から、「波乱の東証グロース改革」という連載が開始され、動向に注目が集まっています。
ネガティブな面が多々報じられる中、今回の『新興株ウィークリー』ではグロース市場上場銘柄でも、プライム市場の上場維持や新規上場の基準⋆をクリアしている銘柄かつ、今後も業績成長見通しのある銘柄を探すため、以下のスクリーニングを行いました。(*一部。資料の英文表示など全ての基準には達していない)
①東証グロース市場に上場
②時価総額(普通株ベース)が100億円以上
③株主数が800人以上
④流通株式数が200万株以上
⑤流通株式時価総額が100億円以上※
⑥流通株式比率が35%以上
⑦社外取締役が2名以上かつ1/3以上
⑧議決権電子行使プラットフォーム等を利用
⑨直近通期の売上高が100億円以上
⑩直近2期の経常利益合計額が25億円以上
⑪1日平均売買代金が0.2億円以上(年初来~6/2で計測)
⑫直近の通期売上高と、会社予想売上高がいずれも前期比10%以上増収
⑬今期会社予想経常増益率が前期比増益
(予想経常利益を示していない会社は、予想営業利益を使用)
⑭取引所または日証金による信用規制・注意喚起銘柄を除く
※流通株式時価総額は、流通株式比率×時価総額等算出基準日(事業年度末日)までの3ヶ月の平均時価総額で計算
なお、GMOフィナンシャルゲート(4051)は、スクリーニングで抽出されたものの、5/29(木)に東証プライム市場への上場区分変更承認を発表していたため除外しました。
図表の銘柄は、上記条件をすべて満たしています。掲載は、流通株式時価総額が大きい順です。
【参考】 5/27(火)~6/3(火)で株価上昇が大きかった東証グロース市場指数構成銘柄

■図表 淘汰進むグロース市場で、プライム級の成長期待株は?
コード | 銘柄名 | 株価 (6/3・円) |
今期会社予想 増収率 |
流通株式 時価総額 (百万円) |
5253 | カバー | 1,987 | 21.0% | 95,399 |
166A | タスキホールディングス | 670 | 60.2% | 21,175 |
7047 | ポート | 1,611 | 27.5% | 15,510 |
3496 | アズーム | 8,370 | 18.6% | 12,636 |
3900 | クラウドワークス | 1,033 | 30.0% | 12,057 |
9163 | ナレルグループ | 2,342 | 18.7% | 11,462 |
4371 | コアコンセプト・テクノロジー | 1,369 | 13.7% | 10,611 |
- ※Quick Workstation Astra Manager、会社発表データをもとにSBI証券が作成。
一部掲載銘柄を詳細に解説!
■ナレルグループ (9163)~建設業の人材派遣サービス。IR活動も充実へ
★日足チャート(1年)

★業績推移(百万円)

■人手不足の建設業界で、人材派遣サービスを展開
建設業向け人材派遣が主軸。IT業界への人材派遣も展開しています。売上高構成比は、建設ソリューションが9割で、ITソリューションが1割です(24.10期)。
M&Aによる業容拡大を行ってきたため、借入金を伴ったのれんの多さに課題は残ります。一方、市場自体はメインの建設も、ITも人材不足が叫ばれる業界で成長が見込める分野です。建設業の有効求人倍率は5.57倍、建設技術者派遣需要は約6.6万人不足している状態です(同社資料より)。
20.10期から24.10期にかけて売上高が平均成長率20.3%で成長。2023年に東証グロース市場に上場を果たしました。
■教育体制整備し、豊富な若手人材
未経験者採用型で育成体制を設けています。そのため、幅広い層からの採用が可能となり、特に建設業界で不足している若手人材の安定供給が可能です。
建設業向け人材派遣業を行う会社単体の年齢構成比は、29歳以下が64%で、39歳以下が90%を占めています(24.10期)。業界全体では39歳以下が26%であり、大きく異なる構成です。若年層が多いことで、単価向上による成長が見込めます。
経験者採用も促進しており自社採用メディア(セカコンNEXT)やダイレクトリクルーティングを強化し、採用コストの抑制を図っています。
■IR活動も充実へ
直近では、5/22(木)にコーポレートサイトのリニューアルを実施。「IRサイト、会社情報掲載内容の拡充」をポイントの一つとしてあげています。
6/15(日)には個人投資家向けオンラインIRイベントに参加予定です。『東京勉強会 “学び” と “IR説明会” 』という会で、同社社長がスピーカーとして登場し、今後の成長戦略や質疑応答などを行う予定です。
■コアコンセプト・テクノロジー (4371)~「DX支援」で成長継続。今期から累進配当実施へ
★日足チャート(1年)

★業績推移(百万円)

■「DX支援」と「人材調達支援」が二本柱
2009年に、顧客の事業支援を目的に設立されました。
「DX支援」(24.12期の売上構成比47%)では、独自に体系化された「CCT DXmethod」やDX開発基盤でありIoT/AIソリューションである「Orizuru」を活用。DX後のあるべき姿の策定から技術検証、システム構築、運用・保守、内製化まで一気通貫で顧客を伴走支援しています。
製造業・建設業等に強みを有しています。たとえば建設業では、リモート管理センターを構築し、ベテラン職員が現場にいるかのようなサポートが可能と謳い、現場で行っていた単純作業等を集約、またVR等の活用により社員教育にも寄与しています。同社受注の約6割は、利益率が高くなりやすい一次受けですが、その大部分はこの「DX支援」からとなっています。
「IT人材調達支援」(同53%)では、大手SIer、コンサルティング会社、事業会社向けに、IT人材の調達支援を行っています。蓄積したノウハウや中小IT企業との広範なビジネスパートナーネットワーク「Ohgi」(約5,900社で構成)を活用し、顧客がシステム開発する際に必要な人材調達をワンストップでスピーディーに支援します。
■主力である「DX支援」の受注が大幅増。今期から配当実施へ
業績は順調に拡大しています。単独決算から連結決算に移行した23.12期と前年度の部分は単純比較(参考値)になりますが、24.12期まで7期連続で増収を維持し、経常利益は6期連続で増益となっています。
24.12期は売上高191億円(前期比20%増)、経常利益20億円(前期比15%増)、25.12期会社計画は売上高218億円(前期比13%増)、経常利益23億円(同12%増)です。最初の四半期となる25.12期1Q決算は5/14(水)に発表され、売上高50億円(前年同期比13%増)、経常利益5.9億円(同4%増)と増収増益を確保。「売上・利益いずれも計画を上回る堅調なスタート」(会社資料)となりました。
顧客からの一次請けが多い「DX支援」の粗利率は37%(24.12期)と二次請けが中心の「IT人材調達支援」の同17%を大きく上回ります。1Qでは、将来の売上高につながる受注残で、「DX支援」が前年同期比50%増と大きく伸長しており、将来の利益率向上が期待されます。
なお、配当については内部留保と投資を重視する方針から、設立以来24.12期まで無配を通してきました。しかし、本年2月に配当政策の変更を発表。25.12期以降は連結配当性向20~30%を目安に累進配当を継続する方針に変更しました。
株価は全体が急落した4/7(月)を当面のボトムとして上昇基調が続き、年初来高値を更新中となっています。会社予想1株利益94円31銭に対し、6/3(火)終値1,369円の予想PERは14.5倍で、特に割高感は強くないようです。
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証券オンライントレードの取引手数料は各商品・各コースにより異なりますが、1注文ごとの手数料体系では、最低50円から最大880円までとなります。
1日約定代金合計額で変わる手数料体系では、100万円以下で無料、100万円超~150万円以下で880円、150万円超~200万円以下で1,100円、200万円超~300万円以下で1,540円、以降100万円単位超過ごとに295円ずつ加算され、上限はございません。ただし、強制決済の場合には約定代金×1.32%の手数料(最低手数料2,200円)が適用されます(いずれも税込)。
また、信用取引においては、手数料は無料ですが、買方金利、貸株料、品貸料(逆日歩)、信用取引管理料(事務管理費)等の諸費用が必要です。
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