金利上昇に強い?無借金・キャッシュリッチ16銘柄
金利上昇に強い?無借金・キャッシュリッチ16銘柄

投資情報部 鈴木 英之 髙田 航輝
2026/06/11
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証グロース市場・スタンダード市場の中小型株を中心に、好業績が期待される銘柄や、投資家の皆様が気になる話題についてわかりやすくお伝えします。
新興株ウィークリー
※YouTubeに遷移します。
金利上昇に強い?無借金・キャッシュリッチ16銘柄
東京株式市場は、値動きの荒い展開になっています。日経平均株価は6/3(水)に68,402円13銭の過去最高値(終値ベース)を付けた後、6/4(木)~6/8(月)は3営業日続落となりました。特に、6/8(月)は前週末比2,563円も下げる急落になりました。6/5(金)発表の5月米雇用統計で、非農業部門雇用者数が市場予想を大きく上回り、米国経済の強さが意識され、年末にかけ米政策金利が引き上げられるとの見方が再認識されたことが主因と思われます。ただ、6/9(火)はAI・半導体関連株が買い直される展開となり、日経平均株価も大幅高になりました。
今後はどうなるでしょうか。先行きを占うにあたり重要なポイントは、日米の政策金利の方向感とみられます。上記したように、米国では年末までに政策金利が引き上げられるとの見方が固まりつつあります。一方日本でも、利上げ観測がにわかに強まっています。6/16(火)に結果が発表される日銀金融政策決定会合では、政策金利が0.75%から1%へ引き上げられる可能性が高まっています。日本経済新聞社が5/28~6/4に実施したアンケート調査では、回答者の約9割が6月会合での利上げを予想しているようです。さらに、仮に6月に利上げが実施された場合の「次の利上げ」は2026年12月との見方が最多となっていると伝えられています。
4月~5月に日銀が「過去最大」の11.7兆円の円買い介入を実施したにもかかわらずドル・円相場は現状でも1ドル160円近辺にあり、インフレ圧力を強める要因になっています。円安によるインフレ圧力を弱める意味でも、日銀による利上げが求められやすい環境といえそうです。
すなわち、年内は金利上昇シナリオに沿った銘柄選択が有力視されそうです。3メガバンクは6月に入り相次いで年初来高値を更新しており、今後も金利上昇局面で主役になる可能性がありそうです。
なお、金利上昇は多くの企業にとって逆風になるおそれがあります。特に借入金の多い企業は、支払利息が増えるとの懸念が強まりやすくなります。相対的に借入金が多い建設・不動産株の株価が冴えないのは、金利上昇観測も一因であるとみられます。
こうした中、借入金がそもそもない企業や、潤沢な現金および預金がある企業への注目度が高まる可能性があります。そこで、今回の「新興株ウィークリー」では、金利上昇局面には財務面・パフォーマンス面で相対的に強そうな「無借金・キャッシュリッチ銘柄」を抽出すべく、以下の条件でスクリーニングを実施しました。
(1)東証グロース市場または東証スタンダード市場に上場していること
(2)時価総額(6/9時点)が1,000億円未満であること
(3)6/8(月)までの20営業日における1日当たり平均出来高が2万株以上であること
(4)直近四半期末(本決算の場合は前期末)の長期借入金および短期借入金(1年以内に返済予定の長期借入金も含む)がゼロ
(5)現金預金が時価総額(6/9時点)に占める比率が20%以上
(6)前期純損益が黒字
(7)今期会社予想純利益が前期比で増益の見込み
(8)信用規制銘柄および注意喚起銘柄を除外すること
図表の銘柄は上記の条件をすべて満たしています。掲載の順番は現金預金が時価総額(6/9時点)に占める比率が高い順になっています。
なお、図表には参考データとして予想PERも掲載しています。予想PERの低い銘柄が多い現実が見て取れると思われます。「無借金・キャッシュリッチ銘柄」は、海外投資家や機関投資家等から「潤沢な資金を有効活用していない銘柄」として扱われるケースが多く、低評価のまま放置されやすいとみられます。ただ、これらの企業は逆に、投資家から資本効率改善や増配の圧力を受けたり、M&Aの対象になったりする可能性もあります。
【銘柄一覧】金利上昇に強い?無借金・キャッシュリッチ16銘柄
| コード | 銘柄名 | 株価 【6/9・円】 |
予想PER 【6/9・倍】 |
現金及び預金/時価総額【6/9】 |
| 9876 | コックス | 223 | 5.7 | 71.5% |
| 4838 | スペースシャワーSKIYAKIホールディングス | 627 | 8.3 | 66.2% |
| 6540 | 船場 | 1,489 | 9.9 | 56.8% |
| 1866 | 北野建設 | 970 | 6.7 | 53.8% |
| 332A | ミーク(G) | 1,031 | 12.2 | 41.4% |
| 5139 | オープンワーク(G) | 965 | 20.7 | 36.3% |
| 441A | NE(G) | 256 | 8.5 | 35.7% |
| 7608 | エスケイジャパン | 719 | 8.8 | 34.3% |
| 5570 | ジェノバ(G) | 611 | 14.9 | 33.6% |
| 2332 | クエスト | 1,759 | 10.6 | 31.7% |
| 4498 | サイバートラスト(G) | 1,147 | 15.0 | 28.5% |
| 5621 | ヒューマンテクノロジーズ(G) | 1,377 | 11.9 | 27.6% |
| 6677 | エスケーエレクトロニクス | 3,245 | 10.5 | 26.0% |
| 3798 | ULSグループ/td> | 523 | 12.9 | 25.3% |
| 299A | クラシル(G) | 997 | 17.2 | 21.4% |
| 2354 | YE DIGITAL | 904 | 10.1 | 20.3% |
- ※Quickデータ、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
- ※銘柄名右横に(G)となる銘柄は東証グロース市場上場銘柄で、他は東証スタンダード市場上場銘柄です。
- ※予想PERは会社予想1株利益をもとに計算されています。
- ※NE(441A)は6/12(金)に2026年4月期・本決算を発表する予定になっていますので、ご注意ください。
一部掲載銘柄を詳細に解説!
■ミーク(332A)~株価は「通信会社」で評価も、実態は「IoT/DXプラットフォーム企業」~
◎ソニーネットワークコミュニケーションズから生まれたモバイルIoT支援企業
ソニーネットワークコミュニケーションズから生まれたモバイルIoT支援企業です。事業は大きく「IoT/DXプラットフォームサービス」と「MVNEサービス」の2本柱で構成されています。同社の特徴は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3キャリアを横断して利用できる通信基盤を持つ点にあります。 事業内容を平易に説明すると「世の中の機械をインターネットにつなぐ会社」です。例えば、防犯カメラ、ロボット、決済端末、自販機、工場設備などにSIMを入れ、通信できるようにします。さらに、通信契約管理 、通信量管理 、デバイス管理、データ活用までまとめて支援しています。
2026年3月期の売上高は71.5億円で、事業別売上構成比は「IoT/DXプラットフォームサービス」が27.8%、「MVNEサービス」が72.2%です。
IoT/DXプラットフォームサービス(27.8%)は企業向けにIoT向けSIM 、通信管理システム 、API 閉域ネットワーク 、データ活用機能を提供しています。 用途としては、防犯カメラ、決済端末、エネルギーマネジメント、スマートシティ 、ロボットなどが中心です。 会社はこの分野を「フィジカルAI時代の中長期成長事業」と位置付けています。
MVNEサービス(72.2%)は「携帯サービスを始めたい会社の裏方事業」です。例えば、スポーツチーム 、小売企業 、インフラ企業 などが独自ブランドのモバイルサービスを始める際、SIM調達 、回線管理 、課金 、顧客管理 などを支援します。 短中期の成長事業と位置付けられています。
この会社を理解するうえで非常に重要なポイントは「帯域シェアリング」です。IoT通信は、上り通信(データ送信)が多い特徴があります。一方、MVNE事業のスマホ通信は、下り通信(動画視聴など)が多くなります。 通常はどちらかの帯域が余ってしまいます。同社は両方の事業を持つことで、「IoTの上り帯域 」と「スマホの下り帯域 」を相互利用しています。これが結果として、コスト競争力 、利益率、通信品質 を高めています。
◎「通信関連」としての評価が株価に反映か
同社は2026年3月期から連結決算に移行したため、2025年3月期(単独決算)との比較は単純比較になります。2026年3月期の売上高は前年比19.7%増、経常利益は前年比43.4%増となりました。 利益成長が売上成長を大きく上回っています。2027年3月期は売上高77億円(前期比7.7%増)、経常利益14.4億円(同10.3%増)が会社計画です。
財務は非常に健全です。2026年3月末時点で現金及び預金 49億円、純資産 60億円 、長短借入金ゼロという状態です。 営業キャッシュフローは15億円を創出しています。 グロース企業としては珍しく、「利益も出ていて、お金も潤沢」な企業です。
同社は決算資料で、「フィジカルAIやロボティクス分野で通信需要が大きく伸びる」と明言しています。 同社自体はAIそのものを開発する企業ではありませんが、ロボットやAI機器が増えるほど、通信回線やIoT管理基盤の需要が増えるため、フィジカルAI普及の恩恵を受ける可能性があります。
同社は一見すると「通信会社」にみえることで、好業績・好財務にもかかわらず割安に放置されている可能性があります。しかし実態は、IoT機器をつなぐための通信プラットフォーム企業といえます。特に評価すべき点は、売上高(2026年3月期)の98.9%がリカーリング収益(経常的収益:契約に基づいて定期的な取引・利用により継続的に得られる収入)であること、長短借入金ゼロ 、18%超の高い経常利益率 、フィジカルAI普及の恩恵を受けるポジション、3キャリア対応による差別化等にあります。 「IoT/DXプラットフォーム企業」としての評価が十分に織り込まれていない印象があります。今後はIoT/DXプラットフォーム売上比率の上昇や、フィジカルAI・ロボティクス分野での案件拡大が進めば、市場評価の見直し余地がある企業と考えられます。
■ULSグループ(3798)~ビジネスとITの両方のスキルを兼ね備えた人材が豊富~
◎発注側の立場から企業をコンサルティング
同社は東証スタンダード市場に上場する純粋持株会社です。グループ全体でみると、ITコンサルや自治体・官公庁向けの次世代システムの設計などを提供しています。
ITシステムの構築を単に受託する企業ではなく、発注側となる事業会社にポジションを置いているのが特徴です。ビジネスとITの両方のスキルを兼ね備えた「二刀流」の人材が事業会社のDXプロジェクトを支援します。優秀な二刀流の人材を確保するための採用活動にも注力しており、2026年3月期における社員の平均年収は1,000万円を超えているようです(※1)。
優秀な人材に加え、AI駆動関連サービスも拡充予定となっています。AI駆動開発を簡単に説明すると、人間のエンジニアが行う、仕様書を読んで設計案を出したり、コードを書いたりする作業をAIに任せたり支援させたりする方法です。グループ傘下のULSコンサルティングはクライアント企業に対しCognition AI社が公開したAIエンジニア「Devin」の導入を支援しています。Devinは自律型AIソフトウェアエンジニアで、自ら考え、開発タスクを実行してくれるAIエージェントです。AIが人間の作業を代替するため、人手不足など開発リソースにとらわれることなく、開発スピードを引き上げることが可能になると考えられます。すでに大手国内証券会社などで導入支援実績があります。また、ULSコンサルティングは国内初のDevinパートナーシップ締結企業となっています。
※1:2026年3月期 決算説明会での主な質疑応答の内容(要旨)より
◎前期、今期予想ともに増収増益で好調
2026年3月期通期の業績を確認すると、売上高は166億円(前期比25.7%増)、経常利益は30億6,300万円(同16.1%増)であり増収増益でした。
売上高は9期連続、経常利益は14期連続で過去最高を更新しています。
年間の1株当たり配当金は7円30銭です。
2027年3月期通期の会社発表の業績予想では、売上高202億円(前期比21.7%増)、経常利益37億円(同20.8%増)の増収増益予想です。
年間の配当予想に関しては1株当たり8円20銭で前期比90銭の増配予定です。
年初来の株価をみると苦戦が続いている状況です。2026年1月5日に高値710円を付けましたが、その後は下落基調で6月9日時点の株価終値は523円です。
◎株価はさえないが、今後の展開に期待
前述のとおり、株価を見ると苦戦を強いられていますが、今後の展開で注目したいポイントをいくつかご紹介します。
まずAIエージェントの導入支援に関してです。クライアントがAIエージェントを導入し、システム開発を内製化することで、同社の仕事まで奪われるのではないかという懸念が生じるかもしれません。確かに、システム開発自体はAIが自律して行うため開発の需要は減少する可能性が考えられます。一方で同社が提供するAIエージェントの導入支援に関する需要は今後増加すると思われます。つまり、システム開発自体の一部の工程はAIエージェントに置き換わりますが、そのAIエージェントの導入を支援する同社には追い風になると思われます。
次に株主還元についてです。同社は累進配当制を打ち出しているわけではありませんが、過去の配当実績は減配がない累進配当となっています。同社は、今後の配当方針についても累進配当になる可能性が高いと言及しています(※2)。
続いて、バリュエーションを比較します。IT・コンサル分野の同業としてフューチャー(4722)とベイカレント(6532)を比較対象とします。
6月9日時点の今期予想PERを比較するとULSグループは12.8倍、フューチャーは11.5倍、ベイカレントは17.7倍です。同業他社と比較してバリュエーションに目立った強弱感はなさそうです。単純比較はできませんが参考までに東証スタンダード市場の予想PER(加重平均)は14.25倍(※3)となっており、市場全体よりは割安な水準になっています。
最後に財務面ですが、同社は短期・長期借入金(2026年3月期末時点)がない企業です。6月15日、16日の日銀金融政策決定会合にて政策金利が引き上げられるのではないかと観測されています。利上げ局面では借り入れや借り換えのコストが増加するため、借入金が少ない企業に注目が集まる可能性があります。
直近決算では増収増益であったものの、マーケットにとってサプライズとなるような内容ではなく、株価もさえない展開が続いているのではないかと考えられます。
しかしAIエージェントは中長期的なテーマであり、バリュエーションも割高な水準にあるとは言えないことから、投資妙味がある会社であると考えています。
※2:2026年3月期 決算説明会での主な質疑応答の内容(要旨)より
※3:QUICK提供データより
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