株式等の譲渡所得と税金について
上場株式等の売却益(株取引等の売買で発生した利益)は申告分離課税により課税されます。申告分離課税とは、他の所得(給与や不動産からの収入等)とは分離して税額を計算し、確定申告により納税する課税制度です。
納めるべき税金の額の求め方
1.「株式等の譲渡所得」を求める
年間を通して売却した上場株式等(株取引等の売買で発生した利益)について、それぞれの損益を計算し、合算することで年間損益(株式等の譲渡所得)を求めます。なお、それぞれの損益は、「収入金額」から「取得費と売却費用等の合計」を差し引くことによって計算します。
年間の(株式等の)損益を通算した結果、利益が出ていれば申告が必要となります。また、損失となった場合は、損失の繰越控除を行う事が出来ます。
取得費について
株式等の譲渡所得について、収入金額から控除する取得費は、1株当たり取得費×譲渡した株数で計算されます。
また、同一銘柄を複数回に分けて取得した場合の、1株当たり取得費は、(取得単価×取得株数+手数料等)÷取得株数で計算され、これを「総平均法に準ずる方法」と呼びます。
- 信用取引の場合は個別法を用い、同一銘柄でも平均しません。
- 株式分割などの場合には、1株当たり取得費を調整します。
- 相続・贈与では原則として元の所有者の1株当たり取得費を引継ぎます。
2.税金額を算出
譲渡の時期 | 2013年~2037年 | 2038年以降 |
---|---|---|
所得税率 | 15% | 15% |
復興特別所得税 | 0.315% | - |
住民税率 | 5% | 5% |
合計 | 20.315% | 20% |
- 2013年から2037年までの期間、基準所得税額に2.1%を乗じた額が復興特別所得税として、所得税額に加算されます。 詳細は、以下の関連リンクよりご確認ください。
損失の繰越控除について
上場株式等の譲渡について、年間の損益通算が損失になった場合には、その損失の額を翌年以降3年間にわたり繰り越して、株式等の譲渡所得から控除することができます。
- 損益通算とは、複数の証券会社や異なる金融商品の売買損益を合算することをいいます。
- 繰り越すことができる損失の額は、上場株式等を証券会社等を通じて譲渡した場合の損失に限ります。
- 繰り越した損失の額については、上場株式等の譲渡及び未上場株式等の譲渡による利益から控除することができます。
- 損失の繰越控除を受けるためには、損失が生じた翌年以降、取引の有無にかかわらず連続して確定申告する必要があります。
損失の繰越控除の例
各年の損益が、100万円の損失、30万円の利益、取引なし、50万円の損失、20万円の利益、60万円の利益となった場合の、損失の繰越控除は下表のようになります。
2015年の損失100万円は、翌年以降3年間(2018年まで)を限度に繰り越して株式等の譲渡所得から控除できます。
したがって、2016年の利益30万円から2015年の損失100万円を除いた損失額70万円は、2019年(4年目)に繰り越すことはできません。
そのため、2019年(4年目)の繰越控除可能額は、50万円になります。
なお、損失繰越控除を受けるためには取引および年間損益の有無にかかわらず、毎年確定申告を行う必要がありますのでご注意ください。
信用取引の税金
返済(決済)による譲渡益について
信用取引で返済した場合の譲渡益に対する税金は、現物取引と同様に年間の取引損益を計算します。なお、反対売買により決済を行った信用取引については、建玉の単価ごとに損益を計算します(個別法)。 また、現物株式の取引との損益通算することも可能です。
税率は現物取引と同率で、下表のようになります。
譲渡の時期 | 2013年~2037年 | 2038年以降 |
---|---|---|
所得税率 | 15% | 15% |
復興特別所得税 | 0.315% | - |
住民税率 | 5% | 5% |
合計 | 20.315% | 20% |
- 2013年から2037年までの期間、基準所得税額に2.1%を乗じた額が復興特別所得税として、所得税額に加算されます。 詳細は、以下の関連リンクよりご確認ください。
現引・現渡による譲渡益について
信用取引で買建てた株式を現引した場合は、現引きした株式を売却した時点で譲渡損益を計算します。その際の株式の取得日は信用で買建てた日、取得価額は現引時の精算金額となります。
信用取引で売建てた株式を現渡した場合は、現渡をした日の属する年の所得として譲渡損益を計算します。
配当に関する税金について
信用取引の建玉が決算期の「権利付最終売買日」から「権利落ち日」をまたいだ場合、売建てた方から買建てた方に配当金相当額が支払われます(これを配当落調整金といいます)。
「配当落調整金」は、売り方が買い方に支払うものなので、税法上配当所得には区分されません。買建(受取)の場合は「益金」、売建(支払)の場合は「損金」として譲渡益税の対象となります。
金利・品貸料の取扱いについて
金利や品貸料を支払った場合は、その金額は当該信用取引に要した費用の額として計算し、 金利や品貸料を受けた場合は、その金額は当該信用取引の譲渡益に算入します。
株式の配当金と税金について
国内上場株式の配当金への課税方法は、一定税率の源泉徴収のみで「申告不要」とする事が出来ます。源泉徴収された税金のみで課税関係は終了します。
また、確定申告をして配当控除の適用を受ける事も可能です。その場合、「総合課税」となり税率は累進税率となります。
- 上場株式等とは、上場株式、上場ETF、上場REIT、公募非上場株式投資信託などを指します。
- 未上場株式等、国内上場株式等(発行済み株式総数の5%以上保有する場合)については原則総合課税となります。
- 源泉徴収税率は下表のとおりとなります(税率は、今後変更になる場合もありますのでご注意ください)。
- 非課税法人のお客様で「配当金非課税請求書」が必要な場合は、当社または信託銀行へご請求ください。
- 2013年から2037年までの期間、基準所得税額に2.1%を乗じた額が復興特別所得税として、所得税額に加算されます。 詳細は、以下の関連リンクよりご確認ください。
配当所得を計上する時期
配当所得を計上する時期(源泉徴収税率の適用時期も同じです)は、原則として株主総会の決議の日、中間配当であれば取締役会の決議の日または効力発生日によって判定します。
確定申告手続きについて
1年間(1月1日から12月31日まで)に行った株式の売却について、一般口座で売却益が生じた場合、及び特定口座(源泉徴収なし)で売却益が生じた場合は、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告が必要となります。
特定口座(源泉徴収あり)で売却益が生じた場合については、確定申告を行う必要はありませんが、2つ以上の特定口座(源泉徴収あり)で売却益と売却損が発生した場合、または特定口座(源泉徴収あり)で売却益かつ一般口座で売却損が発生した場合、確定申告を行うことで源泉徴収された所得税の全部または一部の還付を受けることができます。
また、年間の株式の売却について売却損が生じた場合は、確定申告の義務はありませんが、確定申告を行うことで、当該損失を翌年以降3年間繰り越しすることができます。なお税金についての詳細は、お近くの税務署や税理士等の税務の専門家にお問い合わせください。
確定申告書等の作成は国税庁ホームページ(www.nta.go.jp)の「確定申告書等作成コーナー」を御利用ください。また、提出は郵送等又は「e-Tax」を御利用ください。
年間取引報告書について
特定口座内で株(現物・信用取引)をお取引された場合(1/1~12/31 受渡日基準)は、翌年1月中旬~下旬に「年間取引報告書」が発行されます。
- 電子交付サービスで閲覧できる「年間取引報告書」は5年分です。
- 郵送での交付をご希望される際は、所定の発行手数料にて承ります。発行手数料の詳細はこちら
- 源泉徴収方式「あり」を選択されていて、1年間を通じて利益が発生している場合は譲渡益税が源泉徴収されております。
- 源泉徴収方式「なし」を選択されている場合は、1年間を通じて利益が発生していても譲渡益税は源泉徴収されませんので、確定申告の必要がございます。
「年間取引報告書」の表記内容について
※イメージ図のため、実際の年間取引報告書と書式・項目名等が異なる場合がございます。
「特定口座年間取引報告書」の確認方法(操作方法)についてはこちら
「特定口座年間取引報告書」の見方についてはこちら
適格請求書(インボイス)について
当社では、ご申請を受けたお客様に対して、「適格請求書(インボイス)」を交付しております。詳細は以下リンク先をご参照ください
適格請求書(インボイス)について
復興特別所得税について
2011年12月2日に、東日本大震災からの復興を図るための施策に必要な財源確保を目的とした、特別措置法が公布され、「復興特別所得税」および「復興特別法人税」が創設されました。
- 課税対象期間は2013年から2037年までとなります。
- 課税対象となるのは、上記各年分の所得税に係る基準所得税額となります。
- 所得税額に2.1%を上乗せして納付します。
- 分離課税の配当金や公社債・預貯金の利子も対象となります。
上場株式等の取得費の特例(みなし取得価額)
「みなし取得価額」の適用は、2010年12月31日で終了しております。
2010年12月31日までに上場株式等を一般口座で売却した場合は、「みなし取得価額の特例」を適用することにより、「みなし取得価額」を取得費とすることができます。2011年以降の売却についての適用はできなくなりますので、ご注意ください。
「みなし取得費の特例」について
2001年9月30日以前に取得して保有していた上場株式等を、2003年1月1日から2010年12月31日までの間に一般口座にて譲渡した場合には、選択により、その上場株式等の2001年10月1日における終値の80%相当額 を取得費とすることができます(2001年10月1日以降に、株式分割等の権利修正が行われた銘柄については、調整計算をする必要があります)。
下記のような場合に、「みなし取得価額」が有効です
- ◇取得費が分からない場合
- ◇実際の取得費と比較して、みなし取得価額の方が有利な(高い)場合
なお、この特例の適用を受けられない上場株式等の範囲は次の通りです。
- 税制適格ストックオプションの権利行使により取得した株式
- 特定中小会社が発行した株式の譲渡の特例(一定のベンチャー企業等で新規公開の特例を受けたもの、いわゆる新エンジェル税制)の適用を受ける特定株式
ご利用にあたって
- みなし取得価額を利用して譲渡損益を計算する場合には、2001年9月30日以前に取得した同一銘柄の全部について、みなし取得価額を適用して計算することになります。同一銘柄の一部については実際の取得価額を用い、他の部分については取得価額を用いることはできません。
- 2004年12月31日までの手続きにより、みなし取得価額によって特定口座に入れた上場株式等については、2010年末までに限定されず、当該価額が取得価額として継続され、売却の際は特定口座にて損益計算を行います。
また、みなし取得価額によって特定口座に入れた上場株式等が特定口座から払出された後も、2010年末までに限定されず、当該価額が取得価額として継続されます。 - 2001年9月30日以前に取得している株式を相続した場合も、みなし取得価額を適用できます。
ご注意事項
- 上記に記載された商品等へのご投資には、税金以外に、各商品等に所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じる場合がありますのでご注意ください。
- 金融商品の取引や税務申告等により、税務以外に、社会保障制度における取扱に影響が生じ、負担が増加する場合があります。書面の記載方法等、確定申告の詳細については必ず所轄の税務署でご確認ください。
- 当社の説明にかかわらず、お客様の個別の状況に応じて取扱いが異なる場合があります。個別具体的なケースにかかる税務上の取扱い等につきましては、税理士・税務署等にご相談ください。
- 本特例の適用が終了した2011年以降に上場株式等を売却し、取得価額の証明が出来ない場合には、譲渡金額の5%相当額を取得価格とすることが可能ですが、これを利用した場合、税金の計算上お客様の不利になる可能性があります。