信用取引の配当金
信用取引では、実際の株券についての取引が行われていないため、配当金を取得することができません。ただし、配当金は株価へ与える影響が大きいため売り方から買い方に対して、配当(落)調整金が支払われます。これは配当(落)調整金は、配当金が支払われたことによる株価の下落分を調整する目的で、買い方と売り方の間で調整されるものになります。実際の配当金が支払われている訳ではないため、税法上も配当所得ではなく譲渡損益として計算されます。そのため、配当控除の対象とはならないため、注意が必要です。
配当金の支払いは株主総会での決算承認が必要な為、株主総会の概ね1~2週間後にお客様の証券口座へと反映されます。同様に、配当(落)調整金も配当金と同じようなタイミングで調整が行われます。
信用取引の株主優待
信用取引では、実際の株券についての取引が行われていないため、株主優待を取得することはできません。株主優待の権利を取りたい場合、現物株式で購入するか権利付最終日までに建玉分の資金を預入れて、現物株式で引き取る(現引(げんびき)といいます)必要があります。「現引き」をされる場合、手続き後に株が実際に受渡しされるまでに期間があくため、権利確定日の2営業日前までに手続きを行う必要があります。
株主優待とクロス取引(株主優待クロス取引)
現物取引の買いと、信用取引の売りを使い、株価の下落による損失の拡大を抑えつつ株主優待の権利を取る投資手法の一つとして株主優待クロス取引があります。具体的には株主優待の権利を取得したい現物取引の買いと同時に、同銘柄・同価格の信用取引の売りを行い、権利落ち日に「現渡(げんわたし)」(現物株式を品渡しして、信用取引の売りの返済に充当する)を行い、保有ポジションを全て決済する取引になります。
権利付最終日に現物株式を保有して株主優待の権利を取得し、翌日の権利落ち日に売却することになります。株価の上下による損益は現物取引と信用取引で相殺されるため、現物取引に掛かった手数料と、信用取引のコスト分で株主優待の権利を得ることができます。
ただし、以下の点に注意する必要があります。
- 株主優待の権利を取得できる一方で、配当調整金を支払う必要がある
- 信用取引の売りに対して逆日歩(ぎゃくひぶ)が発生する場合がある
- 信用取引の売建てが出来ない銘柄では実施できない
- 証券会社によっては自社ルールによって禁止または制限を設けられていることがありますので、お取引の際には各証券会社の取引ルールを十分にご確認ください。
- 逆日歩は当日の買い・売りの申込み状況で発生の有無が変わりますので、約定日当日は発生するかどうかわかりません。
具体的にかかる費用をまとめてみると以下の通りです
ポイント
- 信用取引では、配当金に代わり配当調整金の授受が行われる
- 信用取引では、株主優待の権利は得られない
- 現物取引と信用取引を組み合わせて株価の下落による損失の拡大を抑える株主優待クロス取引という投資手法がある
- 株主優待クロス取引でも銘柄によっては逆日歩等で株主優待以上の出費になるケースもある
- 株主優待クロス取引が行える銘柄は新規に売建てができる銘柄に限られる