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貸借銘柄とは、制度信用取引において空売りが可能な銘柄のことです。信用銘柄の中でも一定の基準を満たした銘柄のみが指定され、取引の自由度が高まります。本記事では、貸借銘柄の選定条件やメリット・デメリット、注意点、確認方法までをわかりやすく解説します。
貸借銘柄とは?信用銘柄との違いも解説
各取引所では、上場している銘柄のうち、一定の基準を満たした銘柄を、制度信用取引を行うことができる銘柄として選定しており、選定された銘柄を「信用銘制度信用銘柄(以下、信用銘柄)」と呼んでいます。
この信用銘柄のうち、証券会社が証券金融会社から資金と株式の両方を借りることのできる銘柄を「貸借銘柄」といいます。
貸借銘柄と信用銘柄の基本的な違い
信用銘柄と貸借銘柄はどちらも制度信用取引の対象となる銘柄ですが、取引の範囲や選定機関に違いがあります。
信用銘柄は買建てによる取引が可能ですが、売建て(空売り)はできません。
一方、貸借銘柄は、証券会社が証券金融会社から株式を借りられるため、買建てに加えて売建ても可能です。
このように、貸借銘柄の方が取引の自由度が高く、空売りを含む多様な投資戦略に対応できます。
また、信用銘柄は各取引所が選定しているのに対し、貸借銘柄は各取引所と証券金融会社(日証金)が、流動性や時価総額などの要件をもとに選定しています。
こうした違いから、貸借銘柄は制度信用取引市場において重要な役割を担っています。
貸借銘柄に選定されるための条件
貸借銘柄に選定されるには、一定の売買量や取引の安定性といった流動性に加え、債務超過でないことなどの財務的な健全性が求められます。
さらに、上場廃止の恐れがある銘柄や管理銘柄など、市場の信頼性を損なうおそれのある銘柄は対象外とされています。
| 流通株式の数 | 17,000単位以上 |
|---|---|
| 株主数 | 1,700人以上 |
| 売買高および値付率等 | 各銘柄の決算期を含む月の翌々月の末日からさかのぼって原則として6ヵ月間において
|
| 企業業績 | 直前事業年度において純資産の額が正であること |
| その他 | 以下の項目に該当しないこと
|
流動性に関する条件
貸借銘柄における流動性の条件は、主に流通株式数、株主数、売買高および値付率などが挙げられます。
まず、流通株式数は17,000単位以上、株主数は1,700人以上が基準とされ、多くの投資家による分散保有が求められます。
これにより、特定の大口保有者に依存せず、株式の流動性が確保されやすくなります。
売買高では、決算期を含む6ヵ月間の月平均売買高が100単位以上、値付率は立会日数の80%以上という基準が設けられています。
これらは、継続的かつ安定した取引が行われていることを示し、株式の売買がスムーズに成立することを保証します。
市場の安定性を維持するためには、こうした流動性の確保が不可欠であり、流動性が低い銘柄は貸借取引においてリスクや逆日歩の発生を招きやすくなるため、厳しい基準が設けられています。
財務健全性に関する条件
こうした流動性の基準に加え、企業の健全な財務状況も貸借銘柄選定の重要な条件となっています。
主な基準は、直近の事業年度において純資産が正の額であることです。
これは企業が債務超過に陥っていないことを示し、経営の安定性を担保します。
さらに、上場廃止の見込みがある銘柄や、上場廃止基準に基づく改善期間または猶予期間中の銘柄は除外されます。
加えて、管理銘柄や整理銘柄、特別注意銘柄、規制銘柄など、市場の信頼性に問題があると判断された銘柄も選定対象外です。
これらの条件を満たさない場合は、貸借銘柄から除外されるため、制度信用取引の利用が制限されます。
このように、財務健全性の条件は、投資家保護や市場の安定運営に不可欠な役割を果たしています。
貸借銘柄のメリット
貸借銘柄のメリットは以下の通りです。
| 投資家 | 空売りにより株価下落局面でも利益を狙えるため、多様な投資戦略が可能になる。 |
|---|---|
| 市場全体 | 取引の流動性が向上し、市場の価格形成が適正かつ効率的になる。 |
メリット①空売りで下落局面でも利益を狙える
株価が下がると予想される場面では、空売りを使った戦略で利益を狙うことができます。
たとえば、決算発表の前に「業績が悪そう」と予想された銘柄を空売りし、予想通りに株価が下がって、そこで買い戻すことができれば、差額が利益になります。
ほかにも、自然災害や金利上昇などで市場全体が下がりそうなときに、特に影響を受けやすい業種(旅行、建設など)に空売りを仕掛ける方法があります。
また、SNSやメディアで話題になり急騰した銘柄が、その後に材料が出尽くして下がり始めたタイミングを狙って空売りする戦略も有効です。
こうした戦略は、株価が上がるときだけでなく、下がる場面でも利益を得られる手段として、相場の変動に対応しやすくなるメリットがあります。
このように空売りは、株を「安く買って高く売る」の逆で、「高く売って安く買い戻す」ことで利益を出せる仕組みです。
メリット②市場の流動性が向上する
制度信用取引において、このように空売りが可能になるのは、貸借銘柄に指定されることが前提です。
貸借銘柄に指定されると空売りが可能になり、買いだけでなく売りの注文も入るようになります。
売買が増えることで取引が活発化し、株式の流動性が高まります。
流動性が向上すると、投資家にとってはいつでも取引しやすくなるほか、注文が増えて板が厚くなるため、大口の注文でも価格が大きく動きにくくなるという大きなメリットがあります。
また、希望に近い価格で売買が成立しやすくなるため、細かな戦略も立てやすくなります。
流動性が高まることで新たな投資家も参加しやすくなり、結果として市場全体の価格形成もより安定していきます。
貸借銘柄は、こうした取引のしやすさと安定した市場環境を支える重要な存在といえます。
貸借銘柄のデメリットと注意点
貸借銘柄の取引では、以下のリスクに注意が必要です。
| 逆日歩の支払いリスク | 株を借りる際に発生する追加費用で、特に需給がひっ迫すると高額になることがあります。 |
|---|---|
| 踏み上げリスク | 空売りの買い戻しが増えることで株価が急騰し、売建ての場合は損失が膨らむ可能性があります。 |
デメリット①逆日歩(ぎゃくひぶ)の支払いリスク
逆日歩は、空売りの需要が株の供給を上回った際に発生する追加のコストです。
証券金融会社が不足分の株を機関投資家などから調達するため、空売りをしている投資家が貸株料に加えて負担します。
実際に逆日歩が高騰した銘柄をみると、このコストが想定以上に投資成績に影響を与えることがあります。
優待獲得を目的したつなぎ売りも逆日歩が想定以上に高騰すれば、かえって損失を招くケースがあるため注意が必要です。
具体的な例を見てみましょう。
たとえば、2024年9月30日が権利確定日だった湖池屋(2226)では、優待目的のつなぎ売りによる取引が集中したことも要因の一つとなり、権利付き最終日(9月26日)に逆日歩が1株あたり84.8円にまで急騰しました。
湖池屋の株主優待は、100株以上の保有で年1回2,500円相当の自社商品詰め合わせがもらえる内容ですが、つなぎ売りを用いてこの優待を取得した場合、逆日歩が84.8円 × 100株 = 8,480円ものコストとなり、優待価値を大きく上回る損失が発生しています。
このように、逆日歩の水準によっては、優待を得ても金銭的にはマイナスになるケースもあるため、こうした逆日歩のコストをあらかじめ理解しておくことが重要です。
※逆日歩は、日本証券金融が取引日の翌営業日昼頃に発表する数値で決定される為、取引日当日は「逆日歩が発生するかどうか」「逆日歩がいくらになるか」は決まっていません。
株主優待の権利付最終日近くなど、株式が不足しやすい場合は、逆日歩が高額になる場合もございますので、売建をされる場合はご留意ください。
デメリット②踏み上げによる株価の急騰リスク
信用売残が多い(空売りが多くたまっている)状態で株価が急騰すると、「踏み上げ(ショートカバー)」が発生する場合があります。
これは、損失を抑えるために空売りしていた投資家が株を買い戻し始め、その買いがさらに株価を押し上げる現象です。
結果として、株価が短期間で急騰し、空売りを続けたままの投資家は大きな損失を被ることになります。
こうしたリスクに備えるための方法の一つとして、「逆指値注文」をあらかじめ設定しておくことが有効です。
あらかじめ損切りの価格を決めておくことで、予想外の急騰が起きた際にも損失を限定できます。
空売りを行う際は、踏み上げリスクを常に意識したリスク管理が重要です。
貸借銘柄の確認方法
貸借銘柄の最新情報は、日本証券金融(日証金)の公式ウェブサイトで確認できます。以下のページで、銘柄コードや名称から検索が可能です。
【参照】貸借銘柄検索(日本証券金融株式会社のWEBサイト)
※取引前には、空売りの可否や貸借区分などを必ずご確認ください。
まとめ
貸借銘柄は、空売りが可能となることで投資戦略の幅が広がり、市場の流動性向上にもつながる重要な存在です。
選定には流動性や財務健全性など厳格な条件が設けられており、制度信用取引の中でも特に信頼性が高い銘柄といえます。
ただし、逆日歩の発生や踏み上げによる急騰といったリスクもあるため、取引の際は注意が必要です。
日証金サイトや証券会社のツールを活用し、事前に確認しておくことが大切です。
注意事項
- 信用取引をはじめるには、信用取引口座の開設が必要です。NEOTRADE Wの「信用取引」タブから信用取引口座の申込みを行ってください。
- 制度信用取引で売建てた場合、借りる株に対して貸株料が発生します。金利と同様に日数に応じて発生しますが、金利と異なり市況状況によっては逆日歩(品貸料)と呼ばれる費用が追加で発生する場合があります。また、配当金がある場合、配当落調整金を支払う必要があります。
- すべての銘柄で信用取引の売建てができるわけではありません。

