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制度信用取引で信用売りを行うと、証券会社は自社内の買建分から差し引いても足りない株を証券金融会社から借り入れます。
証券金融会社は各証券会社の貸借残を集計して株を融通し、それでも足りない場合は市場から株を調達しています。
株の調達が困難になりそうなときには、証券金融会社が証券会社に対して注意喚起通知を行います。これが貸株注意喚起です。
注意喚起通知の段階では注文への影響はありませんが、株不足の状況が改善しない場合は、逆日歩が発生したり、新規売り停止などの規制がかかったりします。
貸株注意喚起とは?制度の仕組みから原因までを解説
貸株注意喚起とは、制度信用取引の信用売りに関して、逆日歩や新規売り停止規制の可能性がある銘柄に対して、証券金融会社が予め証券会社と投資家に通知を行うものです。以下、仕組みから原因までを説明します。
貸株注意喚起の仕組みと目的
逆日歩や新規売り停止などの制度信用取引の利用を制限する措置は、投資家にとって極めて影響が大きいものといえます。
このため、信用取引の利用制限措置が実施される可能性がある銘柄に関して、証券金融会社(日本証券金融)から証券会社および投資家に対して貸株注意喚起が通知・公表されます。
日本証券金融が貸株の注意喚起を行う基準(2025.8 日本証券金融HPより抜粋)
①残高基準(イ~ハの残高基準のうち2以上の基準に該当した銘柄※)
イ 制度信用売残高が上場株式数の10%以上 又は 制度信用売残高が1万単元以上
ロ 制度信用売残高が買残高の60%以上
ハ 貸株残高が上場株式数の3%以上又は貸株残高が3千単元以上 かつ 貸株残高が融資残高の120%以上
※ 株式の調達が困難となるおそれのない銘柄については、1売買単位当りの投資金額が著しく小さい銘柄または売買高が急増している銘柄で制度信用売残高が急増するおそれがあると認められる銘柄を除き、注意喚起通知の実施を猶予
②特性基準
買い集めや公開買付けにより流動性が著しく低下するおそれがある銘柄、急激な株価の変動または売買高の増加により貸借取引の利用が急増するおそれがある銘柄、株式分割等にかかる基準日や決算期末等を控え借株が制約される銘柄など、個別の理由により株式の調達が困難となるおそれのある銘柄については、上記①の残高基準にかかわらず注意喚起通知を行う。
発生する主な原因は「株不足」
制度信用の信用売りで証券会社が株を投資家に貸し付ける場合、証券会社はまず自社内の信用買いと信用売りを対当させます。
多くの場合は『信用買残>信用売残』なので十分な株が調達できています。それでも足りない場合は、証券会社は証券金融会社から株を借り入れます。
証券金融会社は全証券会社の残高を対当させて融通しますが、それでも足りない場合は超過分を証券会社や外部の株主から借り入れて調達しています。
この状況で、さらに信用売りが増加したり、信用買いが減少したりして、外部からの株の調達が困難となりそうな場合に証券金融会社は貸株注意喚起通知を行います。
この注意喚起は規制ではないため注文に影響はありませんが、その後実際に株の調達が困難となった場合には、逆日歩が発生したり、新規売停止等の規制がかかったりすることになります。
貸株注意喚起の確認方法
特定の銘柄に対して注意喚起が行われているかどうかは、以下のいずれかの方法で確認することができます。
- 当社の注文画面の規制情報(NEOTRADE Wの注文画面)
- 当社の注意喚起銘柄一覧(NEOTRADE Wログイン後の本日の注意銘柄)
- 貸借取引銘柄別制限措置等一覧( 日本証券金融(証券金融会社)のHP)
貸株注意喚起で株価はどうなる?影響をパターン別に解説
貸株注意喚起は、証券会社に株を貸している証券金融会社が、株を調達することが困難に陥りそうなときに、証券会社と投資家に対して通知・公表するものです。
つまり、これらの銘柄は、逆日歩が発生したり、新規売停止の規制がかかったりする可能性がある銘柄ということになります。
以下では、まず貸株注意喚起の対象となりやすい銘柄について説明し、その影響を株価が上昇するケースと下落するケースに分けて解説します。
対象になりやすい銘柄の特徴
株主優待が人気の銘柄は、権利確定日前に現物株式を購入し、同時に信用売りで価格変動リスクをヘッジする(「優待クロス」または「株主優待取り目的のつなぎ売り」)が行われることがあります。
この際、権利確定日をまたいで証券会社から投資家に株の貸出しが必要となります。
一方、権利確定日は株主優待だけでなく配当金や議決権の確定日となっていることが多いため、貸株市場から多くの株が返却されて、貸株市場での供給が細ります。
結果として、株主優待銘柄は権利確定日直前には証券金融会社による株の調達が困難になり、貸株注意喚起、場合によっては逆日歩となることが多くなります。
また、話題性があり信用売建玉が増加している銘柄、公募増資等に伴い株式の空売りが増えそうな銘柄も、証券金融会社による株の調達が困難になりやすく、貸株注意喚起が行われることがあります。
株価が上昇するケース:踏み上げ相場
信用売建玉(ショートポジション)の買戻しが集中することによって株価が急騰することを、踏み上げ(踏み上げ相場)またはショートスクイーズといいます。
まず、踏み上げが起こる前提条件は信用売りポジションが積み上がっていることです。この状態で何らかの原因で株価が大きく上昇すると、売り方の一部に追加保証金(追証)が発生してポジション解消圧力となります。売り方の買戻しがさらなる株価上昇に繋がると、売り方で損失拡大を回避するための買戻しが広がってますます株価が上昇し、連鎖的に信用売りの解消が進むことになります。
信用売残が増加するとともに株価が下落している局面においては、逆日歩や新規売りの停止が、踏み上げのきっかけになることがあります。
逆日歩が課されると信用売りを継続するコストが増加し、反対売買の買いが増えます。また、新規売りが停止されると売り圧力が小さくなり株価が下がりにくくなります。これらによって株価が上昇すると、信用売りに損失覚悟の買戻しが広がって、さらなる株価急騰につながるという流れです
株価が下落するケース:悪材料の先行指標
業績悪化や不祥事などのネガティブな報道や観測記事が出ると信用売りが増加し、その結果株価が下落しやすくなります。
この場合に、貸株注意喚起が公表され、その後実際に逆日歩が課されたり、新規売りが停止されたりして一時的に株価が上昇したとしても、その上昇が一時的なものにとどまり、再びズルズルと株価が下がってしまうことも少なくありません。
これは需給要因で一時的に株価が上昇したとしても、根本的な株価下落要因が払しょくされていないために、長期的な下落トレンドに変化がないからといえます。
【取引別】貸株注意喚起された銘柄の注意点
貸株注意喚起は規制ではないので直ちに取引に制約がかかるということはありません。
一方で、逆日歩が課される、あるは新規の売建てが停止されるなどの取引制限措置の可能性が高いということから、以下のような点において留意する必要があります。
※注意喚起せず取引制限措置が実施される場合もございます。
信用取引への影響:逆日歩と新規売建停止に注意
貸株注意喚起が公表される銘柄は、逆日歩、新規の売建てや現引の制限などの措置が実施される可能性が高い銘柄であるため、信用取引を利用する際には特に注意が必要です。
逆日歩が発生すると、信用取引の売り方は逆日歩を支払い、買い方は逆日歩を受け取ります。
売り方にとっては信用売りを継続する追加コストとなり、逆日歩の水準によってはポジションを維持することが困難になります。
他方、買い方は逆日歩を受け取る側ではあるものの、売り圧力が大きい銘柄であることから再び株価が下落する可能性も念頭に置く必要があります。
また、新規売りが停止されると、売り方にとっては新たに売ってくれる「援軍」がいなくなることになるので、踏み上げリスクを意識して手仕舞いのタイミングを探る必要が出てきます。
さらに、貸株注意喚起が出される状況は、株価が上にも下にも触れやすい状況であることを認識し、買い方、売り方ともに、逆指値注文を利用するなどリスク管理を徹底する必要があります。
優待クロス取引への影響:逆日歩(制度信用で売建てた場合)
株主優待が人気の銘柄では、権利確定日前後の株価下落のリスクをヘッジするために、「優待クロス」または「株主優待取り目的のつなぎ売り」という取引が行われることがあります。
これは①権利確定日前に現物株式を購入し、②同時に信用売りを行って株価下落リスクをヘッジし、③権利確定後に保有する株式現物を現渡して決済するというものです。
優待クロスを最終的に現渡で決済するつもりであれば、貸株注意喚起が公表されても株価の変動に関しては影響がありません。
一方、制度信用取引で優待クロスの信用売りを行っている場合には、逆日歩が発生すると想定外のコスト負担となり、優待クロスで得られる株主優待の価値を上回ってしまうことがあります。
現物取引への影響:激しい株価変動
現物取引に関しては、貸株注意喚起が公表されても直接的な影響はありません。
一方で、貸株注意喚起が公表されること自体が、信用売残が積み上がっていることを示唆しており、市場の過熱感を示す指標と考えることができます。さらに、将来的に逆日歩や新規売り停止となることも想定されることから、その後の株価の値動きが荒くなる可能性がある点に注意が必要です。
貸株注意喚起についてのまとめ
貸株注意喚起は、直接取引に影響があるものではありませんが、市場の過熱感を示すものとして利用することができます。
また、信用取引利用者にとっては、直接的に逆日歩発生や新規売り停止等の可能性を示唆する情報であることから、取引継続の可否、逆指値などを利用したリスク管理の徹底などを再確認する必要があります。
さらに、貸株注意喚起から逆日歩、新規売り停止等の実際の規制となった場合には、踏み上げ相場やその後の反落の可能性についても考えておく必要があります。
注意事項
- 信用取引をはじめるには、信用取引口座の開設が必要です。NEOTRADE Wの「信用取引」タブから信用取引口座の申込みを行ってください。
- 制度信用取引で売建てた場合、借りる株に対して貸株料が発生します。金利と同様に日数に応じて発生しますが、金利と異なり市況状況によっては逆日歩(品貸料)と呼ばれる費用が追加で発生する場合があります。また、配当金がある場合、配当落調整金を支払う必要があります。
- すべての銘柄で信用取引の売建てができるわけではありません。

